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#創造

まちの中心部・駅ナカから
はじめる実証実験の場づくり――
NORIBA10 umedaが創る
新たな価値

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阪急大阪梅田駅2階改札から、徒歩約20歩。大阪梅田という関西最大級のターミナルに位置するNORIBA10 umeda(のりばテンうめだ)。白を基調とした約300㎡の空間は、着席イベントで100名程度まで収容可能。単なるイベントスペースではなく、「新たな価値創造の場」をコンセプトに、国内外の事業会社やスタートアップ、投資家、自治体、さらにはアーティストや学生など、多様な挑戦者が集う "共創スペース"である。
オープンから徐々に知名度が上がり、今では月20件、来場者も7,000名にもなった。
昼は各種セミナーやワークショップ、夜はスタートアップ関連のイベントや交流会が多くなる。時間帯によって利用者層にも空気感にも変化があるのが特徴だが、根底に流れているのは、「よりよい未来を創りたい人々が共感できる仲間に出会うことで、一歩めを踏み出すアイデアと情熱が得られる場所」という、梅田ビジョンが掲げる独自価値の一つ『創造』の思想だ。

「10番目ののりば」に込められた想いとは

NORIBA10 umedaの名称は、電車の"乗り場"に由来する。
3路線9号線まである阪急大阪梅田駅に因み、新しい挑戦へ向かう人々の始発点  ――「未来へ、出発。」するためのホームとなることを願って、同駅の9号線に続く"10番目ののりば"として名付けられた。

「NORIBA10 umeda」https://noriba10.jp/

「スタートアップに限らず、『何をするか』よりも『どこへ向かうか』を大切にする場として、何か新しいことを始めたい人の"始発点"でありたい、そういう想いが込められています。大阪梅田駅のように、"いまココ"から"想い描いた未来"へと向かう『のりば』。駅を利用する人々と同様、年齢も肩書も関係なく、"挑戦する人"に開かれた場所を目指しています」と語ってくれたのは、阪急阪神不動産・都市マネジメント事業部の和田百々葉さんだ。

和田 百々葉さん
阪急阪神不動産 開発事業本部 都市マネジメント事業部

行き交う人々は、阪急電車を利用する人々だけではない。同施設は、商業施設利用、オフィス・ビジネス利用、文化・観光利用といった多様な人々が交差する場所にある。
エントランスには、柱と大型モニターを連動させたイメージ映像が流れており、通行する人々からも注目を集める立地となっている。

「外から見える設計のため、行き交う人々の中には、"何かおもしろそうなことをやっているな"と興味を持ち、後日、別のイベントに参加してくださった方や、イベントを企画された方もいらっしゃいました。それがこの場所の強みです。加えて、施設全体が白い空間となっているのも特徴で、より発想力を求められる会議やワークショップなどにおいて、一般的な会議室では浮かびづらい着想や関係性が生まれるとのお声もいただいています」と和田さん。白を基調としたホワイトキューブ空間は、主催者の想いに幅広く応えることができる。島型レイアウトで行うワークショップ、シアター形式で行うピッチングやトークセッション、1on1ブース、展示会、懇親会――机と椅子を動かせば、空間は瞬時に表情を変える。最初はセミナー形式で始まり、最後は机を全部動かして懇親会になる二部制のイベントの開催もスムーズだ。

「利用目的は、スタートアップのピッチ会をはじめ、スタートアップ経営者によるトークセッションや意見交換、海外のスタートアップと在阪企業のマッチングイベントなど、スタートアップの方々による"新たな挑戦"に関連したものが多くを占めます。大きすぎず、かつ小さすぎないNORIBA10 umedaの規模感は、『他の大きな共創スペースではまだ集客に自信がない』という方々の『実験的に情報発信できる場があれば...』というニーズにフィットしていると思います。スモールステップでの出発を応援できるのは、私たちならではだと思います」と和田さんは話してくれた。4割という高いリピート率も、主催者たちがこの場所で得た手応えの証といえるだろう。

NORIBA10 umedaでの経験を経て、スケールアップした事例も

NORIBA10 umedaでのイベントが"共創の起爆剤"となり、スケールアップしたイベントもある。
イノベーション・プラットフォームであるSTORIUMと連携したイベントがその代表的な例だ。有望なスタートアップ、有力な投資家、豊富なアセットを有する事業会社が集まり、関西のスタートアップ企業と投資家を1on1でリアルにマッチングするミートアップイベントを開催。1on1は、パーテーションで仕切られたブースで行われ、それぞれ25分単位で熱量の高い対話が繰り広げられた。

2024年6月にNORIBA10 umedaで行われたミートアップイベントの様子。ベンチャーキャピタルの方々15名とスタートアップ18社ほどが参加。

「本当に熱気がすごくて、見ている方が酸欠になりそうなくらいでした(笑)。私たちスタッフも、そんな"アツい"出会いの場に立ち会えている、というワクワク感を共有させてもらいました」と和田さん。
大いに盛り上がったこのイベントは、2回目から規模を拡大。グラングリーン大阪 JAM  BASEでの開催となった。
和田さんは、「この成果は、"始発点から未来へ"という、NORIBA10 umedaの目指すところを実現できた好例だと思います」と語った。

梅田という大都市で行う実証実験だからこそ広がる可能性

NORIBA10 umedaのもうひとつの重要な役割は、スタートアップなどの実証実験の場であるという点だ。その成功例のひとつに、Every WiLL社による無人配達受け取りサービスがある。同社は早稲田大学 アントレプレナーシップセンターに本社を置き、荷物受け取りや配送領域でのシェアリングエコノミーサービスの構築などを主な事業内容としている。
同社では、2025年10月から12月までの2か月間、大阪梅田駅周辺の遊休地を活用する無人配達受け取りサービスの実証実験を、NORIBA10 umedaにて行った。遊休地に設置した無人宅配受け取り拠点に、配達員が荷物をまとめて配達するという仕組みをつくることで、人手不足が深刻な「配送の最終区間(ラストワンマイル)」における負担を軽減し、効率的な物流の形を実現するというものだ。実証実験では、利用者ニーズの把握や、場所を提供する企業へのベネフィットの確認、利用オペレーションの検証などが行われ、NORIBA10 umedaも実験場所の調整や、他の利用者への情報発信といったサポートを実施。スタートアップの挑戦を現場で支えるパートナーとして、サービスとユーザーをつなぐ役割を果たした。

「無人配達受け取りサービスの初回利用者は月に約150人。平均利用回数はひと月あたり1.5回で、利用総数200件を超える結果となりました。利用者のリピート率が非常に高く、一番多い利用者では、2か月間で29回もの利用がありました」と驚きを隠せない様子の和田さん。

さらに今回の実証実験では、思わぬ波及効果もあったという。
「無人配達受け取りサービスの利用者のうち、約3割が阪急阪神不動産のグループ施設で『ついで買い』をしていたことがわかりました。設置施設へのベネフィットを明確に示すことができ、予想以上の成果を引き出せたと思います。今後も引き続き、実証実験の結果をもとに阪急阪神グループ会社へのサービス展開において伴走を続けていく予定です。このようなよい形での"共創"を生み出せたことに誇りを持ち、この活動の意義を都市の価値として発信していきたい」と、和田さんは話してくれた。

国際性と多様性が交差する場で見出す、新たな協業・共創の機会

関西のスタートアップを軸とし、多彩なイノベーション企業と積極的に関係構築を図っているNORIBA10 umedaだが、もう一つ注目したいのが、海外のスタートアップ企業との継続的なリレーションシップだ。例えば、Startup Island TAIWANと連携し、台湾スタートアップのピッチや製品の展示会などを実施。このイベントでは、大阪・関西万博の会期中ということもあり、台湾発のスタートアップ企業約30社が一堂に会し、関西の企業との関係構築を図った。

2025年8月にNORIBA10 umdaで行われた「Startup Island TAIWAN in 大阪」の展示の様子。

「出展では、台湾企業がAIやスマートシティ、モビリティ、ヘルスケア、再生可能エネルギーなどESG視点に基づいた最先端の社会実装技術を紹介しました。台湾はDXと産業の高度化を図るAIや半導体などの技術発展を重要政策としているので、このイベントは社会的にも注目を集めました。私自身、多様性と国際性が重視される今後の社会情勢のもと、梅田という都市に期待される役割を改めて認識し、責任をもって役割を果たしたいという想いを強くしました」と和田さん。

これらの実績は一例で、他にも自治体職員による官民連携イベント、キャリア教育をテーマにした異業種ワークショップ、アーティスト同士の共創事例の共有など、設立から約2年という短期間で、様々な人の挑戦の舞台となってきたNORIBA10 umeda。企業をリタイアしたビジネスマンがスタートアップに挑戦し、NORIBA10 umedaを利用するというケースもあり、梅田を舞台とした未来の創造は世代も国境も越えている。

次の挑戦もすでに進んでいる。コミュニティの形成と醸成だ。多様なプレイヤーが集まる場所としての認知が高まるにつれ、利用希望者もクチコミで広がる今、それぞれの挑戦の可能性がより広がる機会の創出を狙う。

「社会課題の解消に向けて魅力あふれるプレイヤーが集まっているものの、それぞれのプレイヤー同士の"出会いと交流"はいまだ限定的だと感じています。プレイヤー同士のコミュニティを形成して交流を促すことで、社会的なインパクトはより大きくなるはず。今後は、NORIBA10 umedaをコミュニティ形成のプラットフォームとして活用し、つながりを深めていく仕組みを考えています。コミュニティの形成や実証実験を通して、新たな協業や共創の機会につなげていきたい」と、和田さんは今後について力強く語ってくれた。

梅田を"実証実験都市"へ――NORIBA10 umedaが未来へと続く共創スペースに

現在、大阪商工会議所では、生活の場を実験場とし、新たな価値やビジネスを創出する「まちなかリビングラボ」の実現を目指して、大阪の様々なエリアで地域特性を活かした取り組みを進めている。そんな中、梅田の魅力は、やはりその規模感と利用する人々の多様性だと和田さんは語ってくれた。

「通勤、通学、レジャー、インバウンドなど、多彩な人々が集まる都市空間で、新しい技術やサービスの需要を小規模から検証できるという環境が、NORIBA10 umedaを利用いただく最大のメリットだと思います。実際、今までの事例を振り返っても、梅田での実証実験は、スタートアップ企業の成長に非常に重要なプロセスになっていると感じます。彼らの熱量を柔軟にサポートすることで、身近な未来へ貢献できている実感があります」。

実証実験は、プレイヤーにとって新たなビジネス創造の機会であると同時に、梅田エリアの利用者にとっては、イノベーションに触れる機会となる。通勤や通学、レジャーといった日常生活で新しい技術やサービスに触れる機会が増えるたびに、エリアに対する期待感も高まっていく。このようなイノベーションへの"空気感"が人々に伝わることで、国内外からの人流が活発化し、新たな企業の誘致やMICE開催への可能性も広がるだろう。

「梅田で常に新しいことが起きている――そんな街になれば、スタートアップも挑戦しやすくなるし、国際的にも魅力的な都市になると思います。今後は行政・大学・研究機関、阪急阪神グループ各社との連携やコミュニティ内での交流活性化を進め、積極的に情報発信していきたい。共創スペースとしての位置づけを、より明確にしていければと考えています」。

駅改札から20歩。ここから生まれる小さな挑戦は、やがて都市の日常を変える大きな流れへと育っていく。今日もこの"10番目ののりば"は、未来へと続く道を拓く新たなプレイヤーたちを迎えている。

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