梅田が世界から選ばれるまちに。
エリアマネジメントが拓く梅田の未来

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国際競争の単位が「国」ではなく「都市」となっている現代。ニューヨークやメルボルンのように国際的に高い評価を受ける都市ブランドの形成を目指す動きが加速している。こうした潮流のなかで欠かせない取り組みが「エリアマネジメント」である。これは都市の運営を行政任せにするのではなく、地域の当事者が主体となって継続的に取り組む手法であり、近年活動は活性化しており、都市の競争力を下支えする土台となってきている。
大阪梅田では、再開発の本格化と並行してエリアマネジメントが進められており、近年、その実践は梅田という一つのエリアにとどまらず、御堂筋や難波といった大阪都心全体の連携にも視野を広げ始めている。

都市の価値は、もはや施設単体や開発プロジェクトだけではなく、そこを訪れる多様な人々が交わり、刺激し合うことで生まれる『出会いと交流』で決まっていく。この『出会いと交流』は正に梅田ビジョンが掲げる独自価値の一つである。
また、エリアマネジメントは、多様な人々によるイノベーションを誘発する場や機会を提供する役割もあり、梅田ビジョンが掲げる『創造』『体験と発見』という独自価値の実現を下支えする取り組みでもあると言えるだろう。
本記事では、梅田におけるエリアマネジメントの歩みと現在地をひも解き、今後の新たな展望を見ていきながら、梅田という都市の魅力あふれる未来を考えていく。

エリアマネジメントとは

エリアマネジメントとは、特定のエリアに関わる事業者、行政、地域団体などが主体となり、その場所の課題を解決しながら、魅力や利便性を継続的に高めていく取り組みのことを指す。「エリマネ」と略されることも多く、行政区域を単位とする従来のまちづくりとは異なり、「エリア」単位に人の動きや生活圏、来街者の行動実態に即した取り組みである点が大きな特徴である。

その活動内容は多岐にわたる。清掃や巡回といった基本的な維持管理、防犯や防災に関する取り組み、景観形成、空間の利活用、イベントの企画・運営など、そのエリアの特性や課題に応じて適した取り組みが展開される。重要なのは、これらが単発の施策ではなく、公共、民間ともに連携してエリア関係者が継続的に関わり続ける「仕組み」として機能している点である。

活性化する梅田のエリアマネジメント――梅田の魅力を高めるために

大阪梅田は、JR大阪駅はじめ鉄道7駅が存在する交通機能のほか、商業、ビジネス、宿泊、エンタメといった多様な都市機能が高度に集積したエリアである。一方で、その形成過程は一様ではなく、鉄道会社やデベロッパーごとに異なる歴史を持つ複数の小エリア単位でそれぞれが発展し、現在の姿がつくられてきた。

2010年代前半、都市再生プロジェクトの伸展によって、2011年には大阪ステーションシティ、2012年に阪急百貨店建替え(現・大阪梅田ツインタワーズ・ノース)、2013年にグランフロント大阪と、大規模プロジェクトの開業が控えていた。
この流れの中、梅田で初めて設立されたエリアマネジメント団体が「梅田地区エリアマネジメント実践連絡会(以下、実践連絡会)」である。設立当初からに関わってきた阪急阪神不動産※ 都市マネジメント事業部の大谷文人さんは、実践連絡会について次のように語る。

大谷 文人さん
阪急阪神不動産 開発事業本部 都市マネジメント事業部

「実践連絡会は、2009年にJR西日本、阪急電鉄、阪神電気鉄道、グランフロント大阪TMO設立準備委員会の4者で発足しました。その後、2021年に大阪メトロが加入し、今は5者で運営しています。設立以降、大規模プロジェクトの進行を見据えながら『駅から拡がるまちづくり』『歩いて楽しいまちづくり』『新しい時代のまちづくり』を活動コンセプトにエリマネを推進してきました。」
※阪急電鉄、阪神電気鉄道の業務代行者

以降、官民連携によるエリアマネジメント活性化が進み、大阪市エリアマネジメント活動促進条例が2014年に施行、2018年に創設された「地域再生エリアマネジメント負担金制度」に基づく「大阪市地域再生エリアマネジメント計画」が作成されるなど、法的な環境整備も成された。

その一方で、実践連絡会では国際競争力強化に向け、国の支援も得ながら「国際的ビジネス環境改善・シティセールス支援事業」にも取り組むようになり、より包括的かつ幅広い事業を展開するようになっていった。なお、後述するが、そのような背景のもと、同連絡会によって2018年に策定されたのが「Walkable UMEDA構想」だ。

「実践連絡会立ち上げ時では、エリアマネジメントの取組みはまだまだ先駆け的なものでしたが、今やエリアマネジメントは全国に広がり、2016年には知見共有や人材交流を目的とした"全国エリアマネジメントネットワーク※"も設立されました」と大谷さん。
※「全国エリマネ【エリアマネジメント3.0 〜共創とリーダーシップによるまちの再創造〜】」
https://areamanagementnetwork.jp/2026/01/16/

"都市の役割"とは?「Walkable UMEDA構想」が目指す質の高い都市空間

「梅田を国際競争力のある都市に発展させるために何が必要か、と考えたとき、国際的に高い都市ブランドを確立しているメルボルンやニューヨークの魅力について分析しました。その結果、その都市で過ごす時間や活動そのものが高い魅力を持っていることに気づきました。そこで梅田でも『歩く・滞在する・出会う』魅力を高めていくことを目指すことにしました」と大谷さんは当時を振り返る。

「Walkable UMEDA構想」は、単に歩行環境を改善することを目的としたものではなく、広場や街路といった都市空間を、人が滞在し、出会いが生まれる場として定義し、都市体験の質を高めることを狙いとしている。@図に示すように、「うめきたエリア」「阪急大阪梅田駅・茶屋町エリア」「JR大阪駅南エリア(ダイヤモンド地区)」「西梅田エリア」「JR大阪駅エリア」など、特性の異なる複数のエリアが「梅田コネクトロード」によってつながりあい、豊かな回遊を実現できる歩行者ネットワークを創り出すことで、「"もっと"歩いて楽しいまち」の実現を目指している。

なお、2024年にはこの構想の内容を改めて定義し直されている。その背景について、大谷さんは次のように語る。
「構想策定後、歩行者空間の活用に関する社会実験を行い、学識者・行政と検討を重ねながら、"回遊""賑わい""安全"の観点で実装可能性を検証してきました。その過程で不要不急の外出が自粛されたコロナ禍が起きました。コロナによって、人々が街に出る理由にも大きな変化が生じました。アフターコロナにおいて、いかに人々に再び戻ってきてもらうか、戻ってきた人々にどう街を使ってもらうか...ユーザー視点に立った『都市の役割』を再考する必要性を強く感じました」。

2022年には大阪梅田ツインタワーズ・サウス、2024年にはグラングリーン大阪の先行まちびらきなど、2020年代の大規模プロジェクト竣工も踏まえながら、ユーザーの心情や滞在・屋外利活用における場所の役割などを検討していき、構想を再定義した。

「広場など、エリア内のオープンスペースを『コア』と呼び、"地域の魅力的な資産"と位置づけて質と使われ方についてのありたい姿、つまり目標を整理しました。また、この『コア』と『コア』をつなぐ街路やデッキ、地下通路等の動線を『パス』と呼び、それぞれの特長と課題を整理して、改めて『梅田コネクトロード』を中心とした『コアパスネットワーク』を形成する構想にまとめ直しました」と大谷さんは語る。構想の実現についての具体的な内容として、次のように続けてくれた。

「コアとなるオープンスペースでは、季節の装飾やイベントを常態化し、その季節や時期を楽しめる都市の風景を創出していくことが重要です。また、歩行空間の快適性を高めるため、雨に配慮した動線やベンチの設置、植栽の追加なども有効だと思います。目的地や目的のイベントへ快適にアクセスできるデジタルサイネージの連携や多言語での情報提供など、国際的な競争力を高めるための課題にも積極的に取り組む必要があります」。

"新たなエリアマネジメント"を目指して――「全国エリマネシンポジウム2025」

2025年9月4日(木)、梅田にあるコングレスクエア グラングリーン大阪において日本各地のエリアマネジメントに取り組む団体や自治体、研究者が集まり、知見の共有や課題解決に向けた議論を行う「全国エリアマネジメントシンポジウム2025」が開催された。シンポジウムは2部構成で、前半は約20年のエリアマネジメントの歩みの振り返りと、次の時代「エリマネ3.0」に向けてのディスカッション。後半は大阪セッションとして、梅田・御堂筋・難波のエリマネ団体が集い、現場の視点で意見交換が行われた。

大谷さんは、このシンポジウムの大阪開催には、「これからのエリアマネジメントの」実践のための大きなメッセージが含まれていると思います」という。曰く、そのキーワードは「エリア連携」だと言う。

「国際都市間競争の時代に、大阪都心のエリア連携による"面の体験価値"を上げることは欠かせないと考えます。エリア連携の狙いをひと言で言うと、来る人にとって"エリアの境目を意識せずに楽しめる大阪都心"をつくること。結果として、エリアの滞在時間や再訪率、街の評価を上げたい、ということです。
"歴史""テーマ型アミューズメント""名所巡り" "ビジネス" "宿泊"など、来街者の目的はそれぞれ異なります。各エリアの特性を尊重し、違いを強みにして相互補完しつつ、来街者中心の目線で回遊しやすさや快適さといったエリアマネジメントを設計することが大切です。梅田を起点とし、御堂筋・難波とともに"面で価値向上を図る"モデルを示し、エリア連携の加速を目指すために、シンポジウムでも議論が深められたと思います」と大谷さん。
シンポジウムにあたっては、道路空間を再編した「なんば広場」や「グラングリーン大阪」の現地視察が行われ、エリアマネジメントの次のフェーズへの議論の礎となった。全国の実践者と大阪の関係者の間で知見の横展開が行われた。

また、全国エリアマネジメントネットワークの活動としても、今回のシンポジウムの大阪開催は意味のあるものとなったという。
「 "これからのエリアマネジメントの在り方" について議論を深める場を、ここ大阪・梅田で持てたこと自体が、次のフェーズへ進むための大きな意義となりました。また、梅田単体ではなく、御堂筋・難波と"面での連携"を全国に示し、議論と実践をつなぐ関係づくりまで進められたことも、大きな成果だったと感じています」。

さらに、シンポジウム以外でも「エリマネピッチ&トーク」という新しい試みがなされた。各都市のエリマネ団体がショートピッチでその取り組みを紹介し、参加者と意見交換するというものだ。
「意見交換では、現場の担当者が等身大の意見を発し、会場もそれに呼応して活発なディスカッションに発展しました。エリマネは地域固有の課題が多く、万能な共通解は見つけにくい領域ですが、各エリアの創意工夫や合意形成のプロセスを共有することに価値があると体感できました」と大谷さんは振り返った。

今後の展望──連携を「仕組み」にするために

梅田においては、実践連絡会の設立から15年以上が経過し、各小エリアのエリマネ組織の取り組みも活発に行われている。これらをより大きな渦としていけるよう、各エリアの特性に沿った取り組みを、確かな体制で継続させることが重要だ。そのための役割を果たす実践連絡会の活動は、どのように変化していくのだろうか。大谷さんは次のように語る。

「今までは、梅田におけるエリアマネジメントを牽引する立場として取り組んできたところもありました。しかし今後は、小エリアの組織の活動を俯瞰的にとらえ、連携ハブとしての実践連絡会の役割を明確化し、各団体と協働で活動の質を底上げしていきたいと思います」。

「Walkable UMEDA構想」も次のプロセスに進んでいる。同構想で目指すまちの姿は"イノベーション創出都市・大阪梅田"だ。その実現にはハード整備だけでなく、制度や運用面での調整も欠かせない。しかし、それらすべてを実践連絡会が担うのは不可能だ。各団体や行政・警察と連携すべきところは連携し、任せるべきところは任せ、協働すべきところは協働する。それぞれがそれぞれの立場で役割を果たすことが重要となる──大谷さんはそう続けた。

「実践連絡会としては、構想実現のための関係者のベクトル合わせを最優先に担うのが役割だと考えています。また同時に、運営ルールや占有の柔軟化、財源確保に資する規制緩和等、エリマネが円滑に動ける制度面の進展を強く願っています。エリマネ活動の合意形成から現場実装までがさらにスムーズになり、実践連絡会設立20周年となる2029年には、回遊性・快適性が高く、活気と安心感ある梅田を実現することが目標です。
また、大阪市は梅田・御堂筋・なんばと都市が近くつながっているのが特長です。そのメリットを最大限に活かし、大阪市全体でエリア連携していけるよう活動を続けていきたいです。そのことで、これまで大阪や梅田に接点の無かった人々が国内外から集まり、交流することで唯一無二の発見(イノベーション)が次々と溢れるような『国際交流拠点』になってほしいです」。

大阪梅田で培われてきたエリアマネジメントの実践は、いま、大阪という都市全体の未来を形づくる段階へと進みつつあるといえるだろう。

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