
梅田エリアの価値向上に向けた構想「梅田ビジョン」。
梅田のあるべき姿として、『創造』『出会いと交流』『体験と発見』を3つの「独自価値」と定め、それらを高めることで世界と関西をつなぐ「国際交流拠点」となることを目指している。その中の一つ『出会いと交流』を創出していくために、「MICE(※)」が重要なキーワードとなってくる。
「うめきた」をはじめとする駅前エリアの再開発が進み、国内外から多様な人・企業が集まり、交流を生む都市として大きな注目を集めている大阪梅田。この利点に着目し、まち全体をひとつの大きなMICEの舞台と捉える「エリアMICE」という新たな取り組みが始動中だ。多様な施設を横断し、エリア全体でMICEを受け入れることで「MICE都市・梅田」のブランディングを確立し、都市間競争力のさらなる向上を図っていく。新たな出会いとビジネス創造を生む「エリアMICE」の仕掛人が、DMO大阪梅田である。
そのDMO大阪梅田が「エリアMICE」の実験的な取り組みとして位置付け協力したのが、国際フォーラム「地域再生甲子園2025」(2025年9月5日(金)開催)だ。さまざまな都市と地域の知恵が交差したこの国際フォーラムは、「エリアMICE」実施における梅田のポテンシャルを示すと同時に、まちが今後どのように成長していくのかを考える大きな手がかりとなった。本記事では、このイベントを通してみえた梅田の国際交流拠点としての可能性と今後の展望に迫る。
※MICE:M「Meeting(会議)」「Incentive Travel(報奨・研修旅行)、「Convention(国際会議)」「Exhibition(展示会)」の頭文字を取った造語。国際フォーラムや展示会、交流会といったビジネスイベントの総称
エリアMICEとは――DMO大阪梅田が仕掛ける"MICEの舞台"へ変わる転換点
近年の再開発プロジェクトで、まちそのものが大きく生まれ変わろうとしている梅田エリア。うめきた2期地区開発プロジェクトとしてグラングリーン大阪が2024年に先行まちびらきを迎え、JR大阪駅前エリアの再編は日々、進化を遂げている。まちのいたるところで新たな施設が誕生していることに加え、「EXPO2025大阪・関西万博」の開催にも後押しされ、人の流れもこれまで以上に多様化していると言えるだろう。
都市機能が豊富になった梅田のまち全体が活力を維持・向上させるには、多種多様な使われ方を生み出すことが課題である。まちとしての大きなターニングポイントを迎えている梅田エリアで、2023年に設立されたのがDMO大阪梅田だ。

DMO大阪梅田 事務局長

「DMO大阪梅田」https://dmo-umeda.jp/
DMO大阪梅田は、会員企業が連携してMICEの受け入れ・誘致に取り組むための横断組織であり、その構成メンバーには、梅田エリアの多様な都市機能を担う企業や団体が名を連ねる。ホテルやホール、交通機関、旅行会社、商業施設など、その数は40以上にのぼり、梅田のまち全体を「一つの大きなMICE会場」としてコーディネートする役割を担っているのだ。

DMO大阪梅田の川端さんは「MICEの誘致により、まちに新しい人や企業を呼び込むことで経済効果を上げつつ、MICEをきっかけに新たなビジネスやイノベーションの創出を促していくことで、都市としての競争力を高めていく効果が期待されています」と話す。
そして、MICEの中でも近年特に注目を集めるのが「エリアMICE」だ。エリアに点在するホテルやホールが一体となってまち全体で参加者を迎えるというもので、川端さんは「梅田は、まさにこの『エリアMICE』に最適な場所なんです」と力を込める。半径1㎞の徒歩圏内にあらゆるグレードのホテルやホールが建ち並び、バリエーション豊かで充実したアフターMICEが楽しめる高級百貨店や個性豊かな商店、さらに劇場や映画館、グルメスポットなども揃っている梅田。確かに「エリアMICE」において、まちのこうしたメリットが活きてくる。
DMO大阪梅田の存在は、「エリアMICE」誘致を加速させている。「DMO大阪梅田の設立によって、『梅田でMICEを開催したいが、どの会場に相談すれば良いのかわからない』という声が解消され、エリア外の主催者からの相談が増加。施設同士の横連携も加速しました」と川端さん。「単館では受け入れが難しい規模でも、複数施設が手を取り合えば実現できる」という成功例が生まれ、梅田は"新たなMICEを提供するまち"へと変貌を遂げつつあるのだ。
その象徴的な一例となった「地域再生甲子園2025」。次章では、梅田がエリアMICEの実力と将来性を示した事例をご紹介しよう。
「地域再生甲子園2025」とは――都市と地域が交差する国際フォーラム
「地域再生甲子園2025」は、阪急阪神不動産、日本政策投資銀行、日本経済新聞社大阪本社が中心となり、DMO大阪梅田が協力して開催された国際フォーラムだ。アメリカで中心市街地活性化を手がける団体「Main Street America(MSA)」を招聘し、国内外の地域再生の成功事例、地域経済循環、シビックプライドや地域産業とDX(デジタルトランスフォーメーション)、都市再生など、幅広いテーマで議論が交わされた。
「都市と地域の課題が複雑に絡み合う今、"最前線で動くプレイヤー同士が学び合う場"を梅田につくることで、これからのまちづくりのヒントを共有し、新しい動きを生み出していく――そんな役割を担うフォーラムをメインイベントとして開催したのが、この『地域再生甲子園2025』です」と川端さん。
さらにこのフォーラムには、「エリアMICEを推進する立場として、まず自分たちが実践してみせる」という強いメッセージも込められている――と川端さんは続けた。
「梅田ビジョン」が掲げる「国際交流拠点としてのMICE推進」を実践するため、実際にアメリカからMSAを招聘。「地域再生甲子園2025」は、都市としてのポテンシャル、施設同士の連携力、そして多様なプレイヤーが集う"梅田という舞台"が持つ集積力を、DMO大阪梅田が実際にエリアMICEとして示した取り組みだったのだ。
また、イベント名に『甲子園』という名称を入れたことについては、「『野球の聖地』と呼ばれる甲子園にちなみ、『全国のトップランナーが集い、互いに高め合い、次の地域の未来を創る場所(聖地)にしたい』という想いを込めたかったから。地域の活力は都市の活力に直結します。全国から地域再生プレイヤーを集めることは、梅田の長期的発展にもつながると考えました」とも話してくれた。
「まち全体で迎える」――梅田が示した"エリアMICE"の実力
「地域再生甲子園2025」の開催中、梅田のまちは"ひとつの大きな会場"として機能した。会場となったのは、コングレスクエア グラングリーン大阪を中心とするエリア一帯。「フォーラム会場、ネットワーキング、宿泊、アフターMICE(懇親・まち歩き・飲食)まで、『歩いて回れる距離にすべてが揃っている』という梅田の特性が最大限に発揮されました」と川端さんは振り返る。

コングレスクエア グラングリーン大阪 グランホールで開催された「グローバル都市/地域再生フォーラム」では、アメリカの中心市街地再生支援を行う「MSA(メインストリートアメリカ)」のボードメンバーを招聘。日本側は和歌山大学の足立基浩副学長をコーディネーターに、内閣府の地方創生推進室次長の羽白淳氏や日本政策投資銀行の白水照之氏、香川県三豊市で実際に地域再生に携わる古田秘馬氏といったメンバーが登壇。MSAによるアメリカ各地の地域再生事例紹介や、パネルディスカッションが行われた。

グラングリーン大阪南館にある、アジア初進出の「タイムアウトマーケット大阪」を貸し切り、「ランチタイム交流会」を実施。「最高の食と文化」を集めたフードマーケットで、交流会が盛大に行われた。会場では、招聘地域によるプレゼンテーションをはじめ、参加者と登壇者/参加者同士の活発なネットワークが行われるとともに、各自の地域再生にかかる見聞も深められた。

イベントに先駆け前日には、MSAメンバーに日本での地域再生事例をインプットしてもらうことを目的に、香川県三豊市へのエクスカーションを企画。古田氏のアテンドのもと、地元企業やコミュニティが中心となって取り組んでいる地域再生事例(一棟貸し宿泊施設「URASHIMA VILLAGE」ほか)を訪問。古田氏から説明も受けながら、MSAメンバーは「日本流の地域再生」に感銘を受けつつ、米国との共通点も大いに感じていたようだ。

「各地の地元魅力発信」をテーマに地域物産展も開催。全国から厳選した都道府県の名産・逸品・銘酒が並び、来場者に各地の魅力を感じてもらった。
さまざまなコンテンツを実施し、エリアMICEを展開したが、なかでも大きな好評を得たのは「ランチタイム交流会」だったと川端さん。「もちろんフォーラム自体の満足度は高かったですが、ランチタイム交流会では、タイムアウトマーケット大阪全店舗の人気メニューを厳選したスペシャルビュッフェで、大阪・関西の多様な食の魅力も発信できる内容としました。参加者からは『食事がおいしかったことで、参加者同士や登壇者とのコミュニケーションが促進され、フォーラムの理解度が深まるとともに、ビジネス交流も加速した』といったお声をいただき、このセッションをきっかけに、実際に新しいビジネスにつながるという効果も表れてきています」。
梅田では、このような大規模で、かつユニークなレセプション会場の発掘・開発は課題であり、また主催者からのニーズも非常に多いことから、タイムアウトマーケット大阪をはじめとしたユニークベニューを強化していくことで、さらに魅力的なMICE開催提案につながるだろう。
そして、梅田で「エリアMICE」を行うことは、DMO大阪梅田の会員企業にも新たなメリットを生み出している。「普段は競合関係にある施設同士であっても、MICEにおいては『まち全体の価値向上』という同じ目的で協力し合える、という強みが生まれます。今回のイベントでも、複数会場の調整、参加者動線の設計、受け入れ体制の連携、ホテル・商業施設・交通機関との連動など、DMO大阪梅田を軸にした横連携を実際の形として示すことができたと思います」と川端さん。
こうした横連携は、梅田の魅力をさらに高めていくことになるだろう。
梅田が目指す"次のステージ"とは――「エリアMICE」の未来~プラットフォームの重要性~
今回の「地域再生甲子園2025」で、梅田は都市機能が徒歩圏内にバランスよく集積し、「エリアMICE」開催に適していることを明確に示すことができた。DMO大阪梅田はこの成功を踏まえ、エリアMICEの誘致をより加速させるために次に目指すことは――。このトピックを語るにあたって欠かせないのが「MICEアプリ」のようなプラットフォームの存在だ。環境を整えることで、主催者側のメリットだけではなく、参加者の梅田のまちに対する印象を向上させる鍵となる。
今回の「地域再生甲子園2025」では、イベントの情報収集・参加・交流のためのMICEアプリ「dokoiko 梅田MICEモード」を開発し、実証実験という形で提供した。これについて川端さんは「海外の先進的なエリアMICE事例を視察する中で、『エリアMICE』を堪能するアプリが提供されており、この出来・不出来が参加者の満足度を左右する大切な要素になると実感していました。まち全体でどのようなことをしているのかを紹介するコンテンツや、交流機能などを複合的に組み合わせた海外のアプリを参考に、『梅田でもこれができれば』と考えました」と説明する。
今回のMICEアプリでは、シームレスなイベント情報の収集や参加申し込み機能、デジタルマップによる重要スポットの紹介、エリア回遊のサポート、交流機能を実装し、日本でも有益なのかを検証した。川端さん曰く、参加者アンケートでも非常に高い評価をいただきました」。主催者としても情報の更新や受付の簡略化ができ、コスト的な面でもメリットを感じることができたのだという。

さらに、川端さんは続ける。「梅田の5年、10年先を考えたときに、 多種多様なMICEが日常的にいたるところで行われている、"MICE都市・梅田"のブランディングを確立していかなければならないと思っています。我々としては、そういった誘致活動を行うのはもちろん、より充実したMICEを行ってもらえるような運営をしていきたい。そのために、重要となってくるのがMICEアプリのような"プラットフォーム"の存在だと考えています。私自身も海外のエリアMICEを視察して感じましたが、『MICEアプリ』に対する満足度の高さは、MICEそのものへの評価だけでなく、最終的にはまちそのものの評価にもつながるからです」。
エリアMICEの参加者が、例えばアプリを活用して快適に過ごすことができれば、まちに対する好印象や興味も自ずと高まる。プラットフォームの存在は、MICEを主催する人、参加する人、それぞれにとって有益なものになると川端さんは考えている。
「アプリだけですべてが解決されるわけでもありませんし、アプリに限らず、いかに情報を広げ、交流を促すか――そんな仕掛けづくりに力を入れ、主催者にとっては『梅田はMICE開催環境が素晴らしい』、参加者(来街者)にとっては『梅田はいつも何か面白いMICEがある』、という風になっていけば――」と川端さん。
「プラットフォーム」の充実が「エリアMICE」のさらなる盛り上がりを生み、ひいてはまちの魅力向上にもつながっていく――。最新技術も活用しながら進化を続ける、梅田のまちと「エリアMICE」の今後に期待が膨らむ。