
ビジネスパーソンにとって、出会いと交流がもたらす刺激は、自身の学びと成長、仕事へのモチベーションを高めてくれる。そんなきっかけを与える社外コミュニティが、梅田のまちに存在している。
阪急阪神のオフィスが運営する「阪急阪神ワーカーズサービス」。阪急阪神グループのオフィスビルで働く人々を対象に、会社の枠を超えた仲間と出会えるイベントやサークル活動、交流会などの場を提供するサービスだ。数ある取り組みの中でも、ワーカーたちが自発的にアイデアを出し合い、活動を展開するビジネスコミュニティ「ワーカーズビジネスコミュニティ(以下、WBC)」は、とりわけ象徴的な存在と言えるだろう。
会社や業種、職種、世代の枠を越えた出会いと学びが自然と循環するこの場所は、いかにしてワーカーのチャレンジ精神を掻き立て、梅田で働くことに新たな価値を生み出そうとしているのか。参加メンバー2名と事務局担当者の声から、WBCの魅力と梅田で働く面白さを紐解いていく。

Hさん(WBC2期生、大手化学メーカー勤務)
Aさん(WBC2期生、精密機器メーカー勤務)
長門 徹さん(阪急阪神ビルマネジメント株式会社、オフィス営業部)
会社の枠を越えて見つける、仕事と自分を変える「きっかけ」
――まずは、WBCの概要を教えていただけますか。
長門さん(以下、長門) 阪急阪神のオフィスでは、阪急阪神グループのオフィスビルで働く皆さんを対象に、「働くを、面白くする!」をコンセプトとした「阪急阪神ワーカーズサービス」を展開しています。その中で、単なるイベント参加にとどまらず、ワーカー同士が深く、継続的につながり、主体的に挑戦できる場をつくりたいという想いから立ち上げたのがWBCです。
WBCは、年に1、2度メンバーを募集するビジネスコミュニティで、所定の事前講座(WBC Pre)を修了したメンバーで構成されています。1期生から3期生までは約60~70名ほどが所属していましたが、4期生が加入して約80名となりました。本日参加してくださっているAさんとHさんは、お二人とも2期生です。
――お二人は普段どのようなお仕事をされているのでしょうか。また、WBCに参加したきっかけを教えてください。
Aさん 精密機器メーカーで営業アシスタントをしています。
現在、社会人11年目を迎えましたが、これまで「自分のキャリアはこのままで良いのだろうか」という不安をずっと抱えていました。それに、社内だけではなく社外でも、多様な価値観に触れてみたいと思っていたんです。
そんな時に、以前から気になっていたアメリカの作家、デール・カーネギーの著書『人を動かす』をテーマにしたWBCの事前講座の案内が、ビルのデジタルサイネージに流れているのを目にしました。学生時代にさまざまな講座やサークル活動に参加し、人とのつながりの中で生き生きと活動していた自分を思い出し、「ここに行けば、あのときの自分をもう一度思い出せるかも」と直感で参加を決めました。

Hさん 私は、大手化学メーカーでコンプライアンス分野に携わっています。 WBCに参加し始めた当時は、企業理念の浸透や組織開発、社員のエンゲージメント向上を担当するマネジャーを務めていました。その業務の中で「社外での交流から、自社のエンゲージメントを高めるためのヒントを得られないか」と考えたことが参加のきっかけです。また、会社からの帰路でリフレッシュしたいという思いもありました。
実際に参加してみて感じたのは、WBCは自分の好きなことに取り組める場所であるだけでなく、そこでの経験が仕事の糸口へとつながっていくということです。心地よい達成感が得られる場所になっていると感じます。
個人の「やりたい」を形にする、交流で育む自主企画
――WBCの活動の中で、特に印象に残っているものはありますか?
Aさん WBCでは活動内容を自分たちでも作り出していくのですが、私の自主企画でデザイン思考(※1)のワークショップを開催したことが印象に残っています。
以前、仕事に活かすためにデザイン思考について学習した時、学びへの熱量が高いWBCメンバーのことが頭に浮かびました。熱いマインドを持ったメンバーにもきっと刺さる内容だと考えHさんに相談したところ、「いいじゃん、やってみよう」と、企画内容だけでなく予算の考え方や進め方まで親身にアドバイスをいただきました。
Hさん そうでしたね。Aさんと相談した結果、外部講師の方をお招きしながら、阪神百貨店で予算3,000円以内のプレゼントを、閉店までの1時間で買ってきてもらう実践型ワークショップを企画することになりました。4人1組のチームで買い物に行き、相手のニーズを捉えて、一番気に入ってもらえるプレゼントを競い合うコンテンツです。参加ハードルを下げつつ、どうすれば参加者に楽しんでもらえるかなど、Aさんと一緒にブラッシュアップを重ねました。
会社だと新たな企画を実施する際、稟議や手続きに時間がかかりますが、WBCではスピーディーに実現できることが面白いです。肩書のない自分に戻って挑戦できる場所なのだと思います。
Aさん このワークショップでの経験が、自ら動いて形にしていく面白さを知るきっかけになりました。
※1 デザイン思考
ユーザーの視点に立って本当の課題を見つけ出し、革新的な解決策を生み出すための思考法・問題解決のアプローチのこと。デザイナーが作品を作る際のデザインプロセスを、ビジネスやサービスの開発に応用したもの。

――事務局が提供するイベントもあるのでしょうか?
長門 事務局も、楽しみながら仕事のヒントを得られるようなイベントを企画しています。例えば、休日の1日をかけて行う「経営戦略ゲーム」を過去に開催しました。

Hさん 4人1組で会社経営を疑似体験しながら、最終的な成果を競うものでしたよね。ゲームイベントは毎回興味深く、参加するたびに新しい学びがあります。イベント終了後に交流も兼ねて、梅田のまちへ繰り出すことも含めて楽しみの一つです。
長門 BS(Balance Sheet)※2の作成など、まとまった時間が必要なため、どうしても土日開催になりますが、それでも参加したいと言ってくださる方が多いのはうれしいです。2025年にWBCの担当になって以来、これほど情熱を持って学び続ける社会人が集まっていることに驚いています。
ただ、運営側としては何よりも、メンバー一人ひとりが主体となってWBCをつくり上げていくことを大切にしています。WBCのメンバーが制作した冊子「UMEDA PLUS ONE」は、外部の記者や編集者の方にレクチャーやアドバイスをいただきながら、企画、構成、取材、編集からデザインに至るまで、そのほとんどをメンバーの力で制作されたんです。
※2 BS(Balance Sheet)
貸借対照表のこと。企業の特定時点における財政状態(資産・負債・純資産)を表す財務諸表。

(写真右下)WBCメンバーが企画から取材・編集まで手がけた冊子『UMEDA PLUS ONE』。「梅田での日々に+1の彩りを」という想いのもと、ワーカー視点の気づきや魅力を凝縮した一冊
WBCでの出会いがきっかけに。自分らしい働き方への気づき
――WBCへの参加で、ご自身の中で変わったことや気づきはありましたか?
Hさん 自分の仕事を客観的に見つめ直すきっかけになったと感じています。
WBCの参加メンバーが所属する業界は多種多様です。例えば小売・サービス業など、他業種に携わるメンバーとの交流は、自分の視野を広げる時間になりました。大きな組織に所属しているメンバーが集まっているので「企業の中でどのように挑戦し、工夫すべきか」といった共通の課題感を持っているからです。それぞれの異なる企業文化や考え方に刺激を受けました。単なる名刺交換に留まらない、これまでの異業種交流のイメージを覆す新鮮なコミュニティだと感じています。
Aさん 私は、自分のキャリアに対して抱えていた「これでいいのだろうか」というモヤモヤが晴れたように感じています。
「UMEDA PLUS ONE」の冊子制作チームで活動していた時のことです。Hさんが「Aさんが全部確認して進行してくれたんだ、さすがだね」と声をかけてくださったんです。その言葉をいただいた時、「言われたことだけでなく、自分で考えて判断して動いていいんだ」と、改めて気づくことができました。WBCで多様な価値観に触れる中、会社でどう評価されるかではなく、そもそも自分がどういう人間でありたいかを考えられるようになりました。
Hさん Aさんは、WBCでの出会いや交流を通じて自分自身を掘り下げてこられて、現在はキャリアコンサルタントの資格取得を目指して勉強されているのですよね。
Aさん そうなんです。これまでキャリアに悩んできた時間は無駄ではなく、同じように悩んでいる誰かのために活かせるのではないかと、捉えられるようになったことがきっかけでした。本来、Hさんと私は同じ組織に属していたら、役職の違いがあってフラットに話せる立場ではないのですが、WBCではこうして気軽に相談させていただける。人生のメンターが近くにいるような感覚です。
Hさん WBCでの活動をともにした時間があるからこそ分かりますが、Aさんはキャリアコンサルタントにすごく向いていると思います。ご自身が悩みながら歩んでこられた経験を真っすぐに人へ伝えられるので、言葉にとても説得力があると感じます。

学びと発見のサードプレイスWBCが描く、これからの梅田
――最後に、今後のWBCにおける活動の展望をお聞かせください。あわせて、梅田というまちで働き、挑戦していくことへの期待についても教えていただけますか。
Hさん 私は福岡県出身で、現在は大阪に単身赴任しています。以前の私にとって梅田は通勤先でしかありませんでしたが、WBCに参加してからはまちの見方が変わったと思います。
梅田の魅力は、さまざまな人が行き交い、新たなチャンスに挑戦できる環境があることです。思いついたらすぐに集まれる利便性の良さもありますね。WBCを通じてつながりも広がったので、これからも福岡と梅田、それぞれの魅力を結ぶような活動に取り組んでいきたいです。
WBCのようなコミュニティはサードプレイス(※3)とも言えると思いますが、自分の中では、職場とサードプレイスをつなぐ「2.5プレイス」のような存在だと感じています。WBCでは今後も、職場や家庭での役割から離れた素直な自分として、人が笑顔になれる場をつくっていきたいと思います。
Aさん WBC内外の様々なイベントに参加する中で、改めて梅田にはファッションやショッピング、飲食店などの機能が集約されていることに気づきました。梅田で10年間働いていますが、WBCがきっかけでNORIBA10 umeda(※4)のようなイベントスペースがあることも知り、これまで以上に梅田への愛着が深まったように感じます。
私は京都に住んでいるのですが「梅田で生まれているような取り組みを、京都でも実現できたら面白そう」と妄想しています。こんなふうに未来を考えられるようになったのもWBCがあったからです。
会社と家の往復だけでは価値観はどうしても凝り固まりがちです。だからこそ、社外のコミュニティで得た学びやモチベーションを仕事やプライベートにも活かして、これからも良い影響を与え合える関係を大切にしていきたいです。
長門 事務局が管理人のような存在になるのではなく、私自身も一人のメンバーとして、コミュニティを一緒につくっていく姿勢を大切にしています。今後はWBCで生まれたつながりや価値をコミュニティ内で完結させるのではなく、梅田エリア全体へと広げていきたいですね。
企業や業種、年齢や立場の垣根を越えて人と人がつながり、お互いの強みを活かし合える文化が広がれば、梅田は働く場所に留まらない、新しい挑戦が生まれるまちとして、さらに魅力を増していくと思います。
※3 サードプレイス
家庭(第1の場所)、職場(第2の場所)に続く、個人が居心地の良いと感じる第3の居場所のこと。
※4 NORIBA10 umeda
「新たな価値創造の場」をコンセプトに、国内外の事業会社やスタートアップ、投資家、自治体、さらにはアーティストや学生など、多様な挑戦者が集う "共創スペース"のこと。

会社という枠を超えて人と出会い、学び、挑戦する。WBCの特徴は、参加メンバーが仕事ともプライベートとも違った場として自発的に活動している点にある。
自らの人生や可能性に対して新たな視点を持つことができ、それがメンバー同士で刺激を与え合う好循環を生んでいる。個人の興味関心を深掘りし課題を共有する中で、所属する組織にも客観的に向き合い、これまでと違った目線でチャレンジできるようになる――WBCは、ワーカー同士の交流を通じて、新たな一歩を踏み出す出発点となりうる場でもあるといえるだろう。
仕事をする場所にとどまらず、新しい挑戦を受け止め、個人の可能性を大きく広げてくれるまち、梅田。ここで働く日々が、そして明日が、もっと楽しみになる未来を見据えながら、梅田はこれからも挑戦するすべての人とともに進化を続けていく。
【関連サイト】
・阪急阪神ワーカーズサービス
https://hh-workersweb.com/introduction/
・阪急阪神のオフィス
https://office.hankyu-hanshin.co.jp/
・オフィスワーカー専用フロア「WELLCO」
https://office.hankyu-hanshin.co.jp/twin-south/wellco/
・NORIBA10 umeda
https://noriba10.jp/